「旅」と「メイキング」について
仕事の傍らで1年に1・2回程度、1ヶ月前後をかけて1~2カ国を「旅」する。複数回同じ国に訪れていたりもするので、これまでの訪問国数は20カ国程度と国数だけ見れば多くない。
行き先はグアテマラ・ジョージア・ウズベキスタン・チベット・スリランカ等、その国の中でも自分以外の日本人に遭遇しない土地であることが多い。
言葉がろくに通じない土地であっても、観光地を巡り移動を繰り返す「旅」ではなく、数カ所の町に数日から数週間滞在して地元の人々と交流する「旅」。
同じ場所でも朝、昼、夜と時間帯が異なると人々の生活行動も当然変わり、それは見える町の景色も変えていく。
一過性でなく時間をかけて向き合う中でさまざまな人や景色の化学反応に触れる「旅」。
映画の撮影はそんな「旅」に酷似している。同じスタジオやセットであっても集まるスタッフとキャストの化学反応により毎日のように変化に富んで、それは舞台裏だけでなく撮影した作品そのものにも影響する。
自分が担当する映画のメイキングにおいて大切にするのは、その化学反応の「旅」の過程だ。特に偶発的なものはずっとカメラを回していたくなる。
映画制作は毎日が困難の連続だが、時に美しい化学反応が起こる。一本の映画制作の過程を知ることでその映画本編が一層特別に観賞できる、その化学反応の「旅」の時間を記録することを大切にしている。
氏家とわ子